和暦 乙巳

海蛇 は69種が熱帯[1]亜熱帯[2]の太平洋とインド洋に棲息する爬虫類。コブラの仲間で岩礁の魚卵を食べる種[3]を除き猛毒をもつ。

胎生のグループ[4]と卵生のグループ[5]に分かれ、前者が一生を海中で過ごすのに対し後者は海陸を往来し陸で産卵する。唯一の遠洋性であるセグロウミヘビ[6]の他はすべて沿岸の浅瀬に棲む。500万年〜1000万年前に西太平洋のコーラルトライアングル[7]で海洋進出したといわれるが、セグロウミヘビも海水温が20℃以上にならない南アメリカやアフリカの最南端は越えられず、大西洋には進出できなかった[8]。中生代白亜紀から新生代古第三紀にも海棲の蛇[9]がいたが、コブラの仲間ではなく現生種の祖先ではない。また胎生のエラブウミヘビはイラブー[10]と呼ばれ燻製は琉球伝統料理の高級食材となっている。
実は、魚類にもウミヘビ科[11]がある。ウナギの仲間で330種が世界中に分布、うち69種が日本に生息する。毒は持たないが歯は鋭い。食用には不向きとされるも、ペルー産のウミヘビ属の一種 Ophichthus remiger は見た目も味もマアナゴに近く、マルアナゴという名で流通している。
さて、夜空にもウミヘビ(星座)がいるが、日本人の誤訳が通用してしまったもの。ヘラクレス
[12]が退治したのはレルナ湖[13]のヒュドラ Hydra で国際的な星座名となっている。ヒュドラ[14]は日本風にいえば九岐大蛇(くまたのおろち)。レルナ湖がエーゲ海のアルゴリス湾の奥の潟湖だったとはいえ海とは隔てられていて、海の怪物とは思えない。

脚注

1.^熱帯:地理学上は赤道を中心に北回帰線(北緯23度26分22秒)と南回帰線(南緯23度26分22秒)に挟まれた帯状の地域。

2.^亜熱帯:地理学上の温帯のうち北回帰線と南回帰線から緯度35度あたりまでの地域。海水温が20℃以上ないと棲息に適さず18℃以下になると死んでしまう。暖流にのって佐渡や北海道あたりまで流されることはあるが越冬できない。

3.^ウミヘビ類は半数致死量でハブの20倍程度の毒をもつが、カメガシラウミヘビ属 Emydocephalusのカメガシラウミヘビとイイジマウミヘビの2種は、毒腺が完全に退化している。

4.^ウミヘビの多くが胎生で、種名にエラブウミヘビ属 Laticauda以外の属名を冠する。陸に上がらないので這うための腹板(蛇腹)は退化し体全体が側偏、尾は櫂状になっている。日本近海で見られるのはイイジマウミヘビ、クロガシラウミヘビ、マダラウミヘビ、クロボシウミヘビ、トゲウミヘビ、セグロウミヘビの6種。2021年に国内で大型種が初確認されヨウリンウミヘビ(葉鱗海蛇)という和名がつけられた。

5.^種名にLaticaudaを冠するエラブウミヘビ亜科 Laticaudinaeの8種は産卵以外でも休息や飲水のため上陸する。英名はsea krait。一般的にはウミヘビとされるが、狭義のウミヘビ類とは別の系統。胴体は丸いが後方は側偏し尾は櫂状になっている。日本にはエラブウミヘビ、ヒロオウミヘビ、アオマダラウミヘビの3種が棲息。英名のkraitは白黒の縞模様のアマガサヘビ類のことだが同じコブラの仲間ではあっても別系統。

6.^セグロウミヘビ:種名はHydrophis platurus。全長60-90cmで背が黒く腹は黄色。英名はyellow-bellied sea snake(黄腹うみへび)という。出雲地方では「龍蛇(りゅうじゃ)神」として豊作、豊漁、家門繁栄などの信仰があり、神迎祭では神々の先導役となる。ウミヘビ類は塩分を排出する器官を持たないので塩水を飲めない。食料から摂る水分の不足は陸からの淡水で補給しているが、本種については乾燥地域で塩分濃度の高い紅海にいないことからも海洋に浮いた雨水で補給していると推測されている。肉にも毒があり食用にはならない。

7^コーラルトライアングル:フィリピン多島海、ボルネオ島東岸、小スンダ列島、およびソロモン諸島で囲まれた三角形の海域のことで、サンゴの種の半分以上が生息するなど生物多様性が極めて高い海域。

8.^1914年に開通したパナマ運河を通って大西洋にでたとみられるウミヘビがカリブ海で発見された例はあるが生息地の拡大は確認されていない。

9.^後期白亜紀にいたSimoliophiidaeの6種には退化した後肢がある。後期白亜紀から古第三紀始新世にかけてPalaeophiidaeの3種、新生代古第三紀にNigerophiidaeの7種が現れた。近年でも新たな化石の発見が続いている。→下記の別表を参照

10.^エラブウナギともいう。イラブー汁は沖縄や鹿児島で薬膳料理として食べられている。滋養のほか神経痛、打ち身、リウマチ、利尿に効果があるとされる。同属のヒロオウミヘビとアオマダラウミヘビもイラブーとして流通している。

11.^ウミヘビ(魚類):英名はsnake eel (へびうなぎ)、科名のOphichthidaeはギリシャ語のophis (へび) と ichthys (魚).を足したものである。ペルーではsnake eelといえばマルアナゴを指し、重要な漁業資源のひとつとなっている。なお爬虫類のウミヘビの英名はsea snakeである。

12.^ヘラクレス:ギリシャ神話の筋肉馬鹿。英雄とされるが「12の功業」の原因は狂気から自分の子3人と兄弟の子2人を炎に投げ込んで殺してしまったことであり、他にも数多く間違って殺したり頭に血が上って殺してしまったりしている。レルナ湖で殺したヒュドラーの胆汁を矢に塗って毒矢としていたが、その毒矢で殺したケンタウロスの血に浸した服を着たことにより体が焼けただれ苦痛に耐えかね、結果、自ら薪を積み命じて生きたまま火葬された。

13.^レルナ湖:ペロポネソス半島の東部にあった淡水の潟湖で、アルゴリス湾とは砂丘によって隔てられていた。青銅器時代初期、レルナ湖の直径は推定4.7kmあったが泥の堆積により19世紀にはマラリア蚊の発生する沼地となり、干拓され消滅した。

14.^ヒュドラー:巨大な胴体に9つの首を持つ大蛇。9つのうち8つの首は倒しても倒しても傷口から新しく2本の首が生えてきて首が増え、中央の首は不死身だった。また猛毒で、ヒュドラーの息を吸っただけで人は死んでしまい、ヒュドラーが寝た場所には猛毒が残るのでそこを通っただけで人は苦しんで死んでしまう。またこの毒には解毒する方法がなかった。


別表 絶滅した3科のウミヘビの一覧

 後期白亜紀 (Late Cretaceous) 1億50万年前から 6600万年前まで
 新生代古第三紀 (Paleogene period) 6,600万年前から2,303万年前まで

Simoliophiidae シモリオフィス科 6種 後期白亜紀

Palaeophiidae パラエオフィス科 3種 後期白亜紀〜古第三紀始新世

Nigerophiidae ニゲロフィス科 7種 新生代古第三紀

参考サイト
logmi 大西洋へ向かうウミヘビは脱水症で死ぬ
ふじのくに地球環境史ミュージアム ヘビ、海へ行く
早水勉のサイト−星座の神話 湖に住む怪物蛇が「うみへび座」の訳
オーシャナ 海に生きる爬虫類、ウミヘビ
出雲観光協会 出雲観光ガイド 神在月
wikipedia.

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