海竜 という種はないが中生代の海洋では魚竜、長頸竜、蒼竜などの竜が繁栄していた。
魚竜 Ichthyosauria は2億5千万年前に出現し9千万年前に絶滅した海棲大型爬虫類[1]。ジュラ紀[2]に繁栄し海洋の覇者であった。晩期には20mを越えるものも現れたが白亜紀[3]末の大量絶滅[4]を待たず絶滅した。1811年に当時12歳のメアリー・アニング[5]によって発見されたイクチオサウルス Ichthyosaurus が属名の由来である。盤竜、植竜、魚竜、鰭竜、偽竜、長頸竜、鱗竜、滄竜、翼竜、恐竜、剣竜、曲竜、角竜、鴨嘴竜、雷竜など竜は「saur-」[6]の訳語として用いられているが、魚竜以外の海棲の「竜」は鰭竜類 Sauropterygi
(長頸竜 Plesiosauria などの古生物)と鱗竜類 Lepidosauria (蜥蜴、蛇など)に属する滄竜 Mosasauria で、どれも鱗竜様類 Lepidosauromorpha に含まれる。長頸竜(首長竜)は後期三畳紀[7]に出現し魚竜が絶滅した後も頂点捕食者[8]のグループだけは繁栄した。魚竜絶滅後の後期白亜紀[9]に蛇との共通祖先から分化した滄竜(モササウルス)は、魚竜のニッチ[10]を埋め、10mを越えるものも出現するなど俄かに頂点捕食者となるが、どの竜も白亜紀末の大量絶滅[4-1]を免れることはできず、滄竜の生息期間は3千2百万年間と魚竜や長頸竜に比べて極めて短い[11]ものとなった。
有田川町で発見され、調査が続けられていた滄竜の化石[12]が新属新種と判明したことが2023年12月11日に発表された。学名メガプテリギウス・ワカヤマエンシス
Megapterygius wakayamaensis 、通称ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)。体長6mにしては異様に大きな翼型の肢鰭が特徴で、大きい翼という意味のメガプテリギウス
Megapterygius という属名がつけられた。また肩甲骨は前肢鰭が後方ではなく横に伸びたことを示唆し、ウミガメやペンギンに近い泳ぎ方をしたと考えられている。
先に羅列した竜のうち、学術的な恐竜 Dinosauria [13]は剣竜、曲竜、角竜、鴨嘴竜、雷竜で、これには現生の鳥類をも含む。翼竜 Pterosauria とは近縁であるが他の竜は随分と系統が離れている[13]。1842年にリチャード・オーウェン[14]が古生物のグループ「Dinosauria」(ギリシャ語の「deinos sauros」[15]由来)を提唱、1895年に横山又次郎[16]によって「恐龍」と和訳され、後に「saur-」を龍(竜)と訳すことが定着した。一般的に干支の中で唯一の架空の動物とされてはいるが、1895年以降、竜は実在の動物なのである。
空想のメガプテリギウス・ワカヤマエンシス Megapterygius wakayamaensis (ワカヤマソウリュウ)
化石の骨格と、現生動物の骨格を比較した結果、前肢はペンギン、胴から下はウミイグアナを参考に描画したもの。モササウルス類の想像図には尾鰭を描かれてるがこの形態で尾鰭は不要と思われまた有無も確認されていないため無かったものとした。頭は頭骨の形状からアオサギを参考にした。
脚注
1.^海棲大型爬虫類 三畳紀には長頸竜近縁の板歯類や偽竜類も繁栄、、鰐や恐竜の原始的グループの原竜類にも唯一だが完全に水生生活に適応したディノケファロサウルスDinocephalosaurus がいた。ジュラ紀になると海生鰐が海洋進出し、白亜紀には海亀や海蛇のなかまが現れた。
2.^ジュラ紀 2億年前から1億4500万年前までの地質時代。三畳紀の次で白亜紀の1つ前にあたる。前期(2億100万年前〜1億7600万年前)中期(1億7600万年前〜1億6100万年前)後期(1億6100万年前〜1億4500万年前)の3期に分けられる。フランス東部からスイス西部に広がるジュラ山脈において広範囲に分布する石灰岩層に因む。
3.^白亜紀 1億4500万年前から6,600万年前までの中生代最後の地質時代。ジュラ紀の次で大量絶滅を経て新生代になる。白亜(白堊)は未固結の石灰岩のこと。前期後期に分けられることもある。
4-1.^大量絶滅 K-Pg境界
中生代白亜紀末の大量絶滅。地球上の動植物のうち4分の3の種が絶滅した。ウミガメやワニなどの一部の変温動物を除き、翼竜、首長竜、滄竜、鳥類以外の恐竜、海生鰐をはじめ、体重が25kg以上になる四肢動物はこの時すべて絶滅した。
4-2.^大量絶滅 P-T境界 古生代ペルム紀末の大量絶滅。全生物種の9割以上が絶滅した。古生代の陸上生物は両生類や単弓類といわれているが最後の巨大な両生類もこのときにほぼ姿を消し、生き延びた原竜から中生代は恐竜・翼竜・鰐の時代となった。
5.^メアリー・アニング Mary Anning 1799年5月21日〜1847年3月9日。イギリスにおける初期の化石採集者で古生物学者。イクチオサウルスは最初の全身化石の発見であった。1821年にはプレシオサウルス Plesiosaurus の骨格化石の初めての発見、その化石はタイプ標本となった。、1828年にはドイツ・バイエルン周辺以外で初めて翼竜(ディモルフォドン dimorphodon)の全身化石を発見。当時のイギリスで労働者階級の女性が教育を受けられる階級の男性と同じ仕事に携われたのは異例であったが本や論文を出版することは許さず、乳がんで47歳で世を去る数か月前にロンドン地質学会の名誉会員に選ばれた。活動拠点のジュラシック・コースト Jurassic Coast は2001年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された。
6.^saur 英語で恐竜は dinosaur = ダイナソー。
7^三畳紀 2億5200万年前から2億100万年前までの地質時代。トリアス紀ともいう。古生代ペルム紀(二畳紀)の次でジュラ紀1つ前。北極から南極に至るパンゲア大陸と呼ばれる超大陸が形成された。前期(2億5200年前〜2億4700万年前)中期(2億4700万年前〜2億3700万年前)後期(2億3700万年前〜2億100万年前)の3期に分けられる。フランス東部からスイス西部に広がるジュラ山脈において広範囲に分布する石灰岩層に因む。堆積条件の異なる3層が重畳していた地層に由来する。
8.^頂点捕食者 天敵や捕食者がいないか、ほとんどいない肉食動物のこと。
9.^後期白亜紀 1億年前から6,600万年前まで。序盤に魚竜が絶滅し滄竜の時代となった。
10.^ニッチ 自然界における生態的地位を意味する。1つの種が利用する、あるまとまった範囲の環境要因のこと。生息場所や捕食関係などをいう。
11.^魚竜、長頸竜、翼竜、および非鳥類型恐竜のグループとしての生息期間はいずれも1億6000万年を超えている。
12.^2006年2月に発見された化石がモササウルスの後肢の骨等であったことが判明、その後発掘が続けられ2011年に前肢の骨化石発見、2016年におよそのクリーニングが完了し化石が全身骨格であったことが明らかとなる。2020年に研究成果を国際学会で発表、2023年4月、モササウルス類化石の新種記載論文を投稿。同年10月に受理された。
13.^恐竜の上位に近縁をまとめ恐竜様類 Dinosauromorpha が置かれ、さらに翼竜と近縁を加えてまとめたものが鳥頸類 Ornithodira、さらに偽鰐類(鰐と近縁をまとめたもの)と双方の近縁をまとめたものを主竜類 Archosaursという。それに近縁を加えた主竜様類 Archosauromorphaは爬虫類の中で鱗竜類-鱗竜様類と並ぶ2大グループである。
14.^サー・リチャード・オーウェン Sir Richard Owen 1804年7月20日〜1892年12月18日。イギリスの生物学者・比較解剖学者・古生物学者。
15 .^Dinosauria 英語ではDinosaur 。語源由来はギリシャ語で、恐ろしいほど大きな deinos 蜥蜴 sauros。
> 16 .^横山 又次郎 1860年6月14日〜1942年1月20日。日本の古生物学者、地質学者。
参考サイト
福井県立恐竜博物館 恐竜・古生物 Q&A
和歌山県立自然博物館 モササウルス
北海道・地質・古生物 :サウルス
wikipedia.
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