和暦 庚子
鼡と海鼠

猟や蝋の旁(つくり)だが単独では鼠の異体字。猟の正字は獵で旁は「けもの」の意。獵の解字は犬を使って獣を狩ることとされる。「鼠」も「獵」の旁の部分も草書体では「鼡」となるが、戦後「鼠」は当用漢字表には載らなかった一方「獵」のほうは当用漢字表[1]に「猟」が採用され常用漢字表[2]にも踏襲された。ちなみに当用とは、さし当って用いるという意味である。
鼡を鼠と解すると「猟」は犬を使って鼠を狩るという頓珍漢な意味の漢字になってしまう。
閑話休題
海鼠と書いて「なまこ」と訓む。なまこの古名は「こ」といい、なまことは生の「こ」のこと。干しなまこは「いりこ[3]」といい漢語では海参と書く。また「このわた[4]・このこ[5]」に古名を残す。ヒトデ、ウニと同じ棘皮動物[6]であり特有の五角形の断面をもつ。ヒトデが丸まったのがウニで、口から裏返ったのが海鼠。幼生の段階で裏返るので棘皮動物なのに殻や棘をもたないものの、海鼠の体内には棘皮になりそこねた無数の石灰質の微小骨片が存在している。


脚注
1.^当用漢字 1946年に告示された当用漢字表では1850字のうち131字が簡易字体で示された。その後1949年に告示された「当用漢字字体表」により、約500字が簡易字体となった。
2.^常用漢字 当用漢字に代わるものとして1981年に告示された漢字。一般の社会生活において使用する漢字の目安として1945字の字種と音訓を選定。
3.^いりこ 煎海鼠。塩水などで煮た後に乾燥させたナマコ。漢語の海参は海の人参(朝鮮人参)の意。
4.^このわた 海鼠腸。ナマコの腸(はらわた)、あるいはその塩辛。
5.^このこ 海鼠子。ナマコの卵巣を乾燥した食品。口子(くちこ)ともいう。
6.^棘皮動物 ウニ、ヒトデ、クモヒトデ、ナマコ、ウミユリなど五放射相称の身体を持つ生物の総称。ナマコ以外の棘皮動物の体壁は殻や棘で覆われているが多数の骨片に分かれているため運動が可能となっている。


参考資料
青空文庫 当用漢字表 https://www.aozora.gr.jp/kanji_table/touyoukanji_hyou/
広辞苑第六版
ウィキペディア(Wikipedia)


後記

2004年から十二支または十二生肖に因んだ漢字を年賀状に選び、2006年からは解字も入れていたが、2020年から十二生肖に因んだ海の生物に関する話題とした。この年はちょうど転換期にあたるため、漢字の話と海鼠の話の2本立てとなった。


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